あるコンサル先で、AIツールを全社に配っても7割が使わない現実に直面した。問題は技術ではなく、変化への適応力。私たちが見た組織の分断と、その先の選択を記す。

支援先の一社で、使える環境を整えたのに使われない、という壁にぶつかった。

その会社はClaude ProとCursorのライセンスを全社員に配布していた。使い方の勉強会も開き、質問用のSlackチャンネルもある。私たちも定着支援に入り、毎日プロンプト例を投稿した。

3ヶ月後、利用ログを一緒に確認した。アクティブユーザーは全体の27%。残りの73%は、一度もログインしていなかった。理由を聞くと「忙しくて」「今の方法で十分」「間違った出力が怖い」と返ってきた。

ツールの問題ではなかった。UIも、精度も、サポート体制も整っていた。それでも使われない。AI活用の課題は、技術の外側にあった。

抵抗勢力という言葉で、思考を止めていた。

経営陣は当初、彼らを「抵抗勢力」と呼んでいた。変化を拒む人たち、と整理すれば、問題を外部化できる。自分たちの責任ではなくなる。

でも、彼らは無能ではなかった。これまで成果を出し、顧客から信頼され、実務を回してきた人たちだ。ただ、変化への適応力が違った。それだけだった。

ダーウィンの言葉がある。「生き残るのは、強い者でも賢い者でもない。変化に適応できる者だ」。能力の問題ではない。適応力の問題だった。

組織変革ではなく、選別として捉え直した。

当初、その会社は「全員を変える」ことを目指していた。研修を増やし、成功事例を共有し、インセンティブを設計する。組織全体を変革しようとした。

無理だった。3ヶ月かけても73%は動かない。説得のコストと、その間に失う機会を天秤にかけた。時間は有限だった。

私たちは方針転換を提案した。全員を変えるのではなく、適応できる人に資源を集中させる。27%のアクティブユーザーだけで新しいチームを組み、新規案件を任せた。

結果は明確だった。従来の半分の工数で、同等以上の成果。Cursorでコードを書き、Claudeでドキュメントを生成し、Notionで非同期に回す。少人数で、以前を上回る業務量を処理した。

残りの73%には、既存業務を継続してもらった。無理に変えようとはしない。ただ、新規採用の基準は適応力を最優先に変えた。

分断を、受け入れるという選択。

組織は分かれた。AIを使うチームと、使わないチーム。成果の差は、月を追うごとに開いた。社内の空気は、少しずつ重くなった。

正しい選択だったかは、わからない。全員を包摂する道もあったかもしれない。でも、その会社は待てなかった。競合はすでにAIで価格を半分にしていた。判断を先延ばしにすれば、会社ごと沈む。

適応できる者が生き残る。それは個人だけでなく、組織にも当てはまる。適応力のある人材を中心に再編成すること。それが、この時代の組織戦略なのかもしれない。

ただ、問いは残る。適応できなかった73%は、本当に適応「できなかった」のか。それとも、環境が適応「させられなかった」のか。設計の問題か、資質の問題か。

答えは出ていない。それでも、手を止めることはできない。分断を抱えたまま、支援先は前へ進む。私たちはその隣で、次の一手を考え続けている。